キンッ…。
アキトとの稽古中、そんな無機質な音と共に私の剣が飛んでいった。
「…あ。」
「……。」
飛ばした張本人は何とも言えない阿呆みたいな顔をして、すぐにニヒルに笑う。
…もう完敗だった。
どれだけスピードを上げたところで、そのリーチが私の動きを止めてしまう。
そんな中で攻撃に転じても、こうして力に捩じ伏せられる。
…これは私の長年の課題だなー。
「褒美は期待していいのかあ?」
「…もちろんいいよ。」
ガッツポーズのアキトを横目に、私は天を仰ぐ。
見事私を越えていったアキトに私も喜びを感じてる。
これで、セザール衰退の火種となった私の罪は…許してもらえるだろうか。
「リン。」
「トキー、この成果で滞在費は問題ないですかー?」
「充分だよ。」
「…後はもう少し全体押し上げれば、私もうやることないかなー。」
アキトとサクの時間外稽古は今日で終了。
そしてお風呂に入って、ご飯でも食べようかと広間へ一人向かう私をトキが改めて捕まえる。
「リンおいで。」
「うん?」
手招きされるままトキの部屋に案内される。
部屋に入るとトキが何故か両手を広げて私を迎えてくれる。
私が首を傾げると、トキは笑う。
「大丈夫だよ。アキトには内緒にしてあげる。」
「っ…!」
トキがお見通しならば、たぶんアキトにもバレてるんじゃないかと思えてしまった。
けど、溢れる思いはもう止まらず。私はトキに飛び込んだ。
「うぅー…。」
「自分で鍛え上げといて負けるのは悔しいなんて。リンはちょっと可愛すぎると思う。」
「悔しいー…ずるいー…。」
「そうだよね。リンからすればあの著しい成長は理不尽に思えるよね。」
本当にそうだよ!!!
何で性別が違うだけで世の中こんなに理不尽なの!!!
「トキー…。」
「俺は感謝してもしきれない。だからこれから期待してていいよ。リンの努力、絶対無駄にしないから。」
「ありがどうー。」
悔しいと泣いて。
嬉しいとまた泣いて。
それをただ、トキは宥めてくれた。

