(二)この世界ごと愛したい





「俺は普通じゃない場所で育ったから、リンを気に掛けるアキトの気持ちが全然分からなかったけど。今はちゃんと理解したよ。」




トキの家は軍師一家だと以前聞いた。


そんなトキが、自分が育った場所を普通じゃないと言った。



軍師一家ならではの家庭の事情があるんだろうか?





「…アキトって面倒見いいもんね。」


「そう思われてるアキトが不憫だけど、間違ってはいないから今はいっか。」




家庭の事情には踏み込むべきではないと思い、アキトの話に逸らしたら不憫だと言われた。







「…あ、戦場あそこかな?」


「そうそう。」




岩山の多い地形。


長引くと予想出来る戦いだからこそ、良く考えてこの囲地を上手く利用している。




「…トキはやっぱりすごいね。」


「相手がソルだからね。相手に不足はないし、何せ数が多いからこうでもしないと。」




南の大国、ソル。


ソル自体になんの恨みもないんだけど、度々私が追い払うことになってばっかりで申し訳ないです。





そう思いながらも、私はトキと出来るだけ敵兵の死角を付く場所に降り立つ。



本陣にて、急に空から落ちてきたトキと私に目を見開くアキト軍。




「トキさん!?」


「リンちゃん!?」




それはそれは困惑させてしまった。



けどここには、サクの姿はない。前線で戦っているんだろうな。