「…その顔、初めて見る。」
「っはぁッ…も…、やめっ…。」
「馬鹿。もっと欲しいって顔だろ、それ。」
「ちがっ…〜っ!?」
ようやく唇が離れたかと思えば、訳の分からんことを言われる。
もっと欲しい…?
私が…!?!?
「し、信じ…らんない。」
「…どうする?」
どうもこうもあるか。
アキトの邪をまさか私になすり付けられるなんて思わなかった。不本意すぎます。
私はアキトが少し身体を離したのを良いことに、すぐさま拘束から抜け出して、もうこの部屋からも出てしまおうかと思い立つ。
「ルイがすげえのは、お前を誰よりも想ってんのにその手を離せることだ。」
「…その話、私には教えないんじゃなかったの?」
「お前気付いてそうだったから?」
「…気付いてるよ。何年の付き合いだと思ってんの。」
ハルを除けば。
今私を一番好きで、一番大事に、一番尊重してくれているのは間違いなくるう。
そんなるうはその気持ちを押し込んで、私を新たな自由の道へと送り出してくれる人。
私も一度はそんな気持ちに胸が痛んで、無理矢理に自分から離れてしまおうと思ったけど。
るうはそれを許してはくれないどころかそんな自分を責めてしまうので止めた。
「俺には真似出来ねえ。」
「…じゃ、私はトキのお部屋に泊めてもらうね。」
「逃げんな。」
「ぐえっ。」
アキトに寝台に引き摺り込まれ。
がっちり腕の中でしっかりホールド。もう逃げ場はございません。
「さっきまで可愛かったのになあ。」
「…もう次邪したら明日から野宿する。」
「せめてトキの部屋行け。」
「するの!?」
「…しねえよ。」
語尾にたぶんって付いてたのは聞こえなかったことにしました。
そして、再び横になれば思い出したかのように睡魔が私に襲いくる。
「余計に疲れさせて悪いな。」
「っつ、疲れ……いや、やっぱやめよ。」
疲れてると言えばアキトが落ち込むし。
疲れてないと言えば邪復活の危険があると察した。

