(二)この世界ごと愛したい




結局お互い無傷のまま。


一太刀も入らず入れさせず、ただひたすら体力だけが削がれて行く。


こうしてるだけで気付けば時間だけが過ぎる。




「二人とも、そろそろストップ。」




肩が上がるほどの疲労。


そんな私とアキトを見兼ねてトキがストップと声を掛けてくれた。




「…リン、やってくれたね。」


「ビックリした?」




トキにしてやったりと笑みを向けると、トキは何やら考え込むように真剣な表情。




「これがビックリしてる顔かあ?」


「…アキトうるさい。」


「何でだよ!?」




トキはここまで急成長したアキトを見てなかったので、驚いたことでしょう。


けど、アキトは想定内だから驚いてないと思ってる。




「次の戦めちゃくちゃ楽しみかも。」


「は?」


「俺の予想何てもう遥かに越えてる。これはアキトが凄いのかリンが凄いのか…どっちもか。」


「…俺だなあ!?」




ようやく自分の開花を思い知った花。


私はそんな微笑ましい二人を見てるだけで嬉しくて。


でも喜びに浸るにはまだ早いので、剣を収めてサクにまた声を掛けて二周目を促す。





「リンちゃんすごいっすね。」


「…まだまだ、この軍の伸び代はこんなもんじゃないよ。」




サクと再び稽古を始めると。


まだやるのかと驚いているアキトとトキ。




「リンまだやるの?」


「もう一周だけねー。」


「瞳の消耗もあったのに大丈夫?」


「うん、アキトも準備しててねー。」