リンは俺にとって、レンの嫁。


昔からの付き合いがある、レンが惚れた女。






そんな女に、まんまと惚れた俺。




自分でも情けねえと思う。レンに申し訳ねえと思う。


だから気持ち一つ伝えられない。








「そんなアレンデールは今、大混乱だよ。」


「…は?」




アレンデールが混乱?


リンが帰国して鬼人が復活したのに?





「どうもリンに罪が課されることになったらしいんだよね。」


「そりゃあ和睦条約中に王族殺せば罪にもなるだろうなあ。お陰でうちも大忙しだ。」


「謀反は勿論のこと、それだけじゃないんだって。」


「ああ?」




トキは各国の情報を集めるため、至る所に間者を放っている。


その間者からの情報らしい。





「謀反に加えて自分の国の街を襲撃して、国外追放だってさ。」


「……。」


「アキトはどう思う?」


「…その辺の腹の探り合いはお前等の得意分野だろ。俺に聞くな。」





あーあ。


リンはまた泣いてねえといいが。






「さらにさらに、南東からアレンデールに一気に攻め入った軍を一人で相手にしたらしいよ。」


「…いよいよ人間業じゃねえなあ。」


「リンは今、どんな気持ちだろうね?」


「…さあな。」




大丈夫だ。


鬼人もルイも、側にいるんだろ?




じゃあリンはたぶん何も問題ねえ。


きっと笑って過ごしてる。






「…アキトは素直じゃないね。」


「俺は素直だ。」


「心配なら心配だって言えばいいのに。」


「お前は最初あんだけリンに関わるなって怒ってたくせに、今はすっかり懐いたなあ?」