(二)この世界ごと愛したい




「…ハル落ち込んでなくてよかった。」


「いや、泣きながら裏山から帰って来たぞ。」


「…泣かなくてもいいのに。」




城門で話し続ける私たちを見兼ねて、トキがるうも城にお邪魔してもいいよと声を掛けてくれた。


るうも私をようやく地に降ろしてくれて、さっきまでいた広間に戻る。




「で?」


「るうしつこい。だから食べたって言ってるじゃん。」


「いつだって聞いてんだよ。」


「今朝です。けーさー。」




広間への道のりも。


広間に到着してからも。



ご飯の件についてまだまだ大きく揉めている私とるう。



アキトとトキはもう私たちに構うことなく、次の戦の相談を始めており関与せず。





「リンちゃーん!」


「あ、ハナちゃん!」




ハナちゃんがパタパタと走ってきた。


その姿も可愛くて、しつこいるうにムカつきつつ思わず頬が緩む。




「リンちゃん大丈夫?昨日の朝からご飯食べてないよね?コーヒーだけじゃなくて何か軽く準備しようか?」


「あ…は、ハナちゃ…。」


「あれ?お客様いらしてたんですかっ!?」




お茶の準備しなきゃと、嵐のように飛んで来ては飛んで行ってしまうハナちゃん。




「へー、お前の今朝って昨日の朝のことか。」


「…記憶が…ちょっと、曖昧で。疲れてるのかな。目の色も変わってて…うん。疲れたなー。」


「…アキト厨房借りるぞ。」




るうはアキトに声を掛けて、厨房の場所も知らないくせに広間を出ていく。



…怒ってる。


あれは明らかにるうが怒ってる。私に見向きもしない時は大体怒ってる。




「ルイは優しいね。リンのご飯準備しに行ったの?」


「…今ビックリするくらい怒ってるよ。」


「え?あれで?」


「トキ。るうってね、普段ガミガミ言ってるけど。あれはまだマシなの。本当に怒ってる時のるうは寧ろ大人しいの。」




あー面倒なことになった。


るうとは他に話したいことがあるのに、全然話が出来そうな雰囲気ではない。



戻って来たらひたすら謝るしかない。