アキト軍、軍師の読みは鋭いなー。
私の方こそ敵いそうにはない相手だ。そんなトキはにっこり笑って私を見ている。
「あ、でも…ソルとの戦場は私のお願いを聞いてほしくて。」
「うわー。リンのお願いってあんまり良いことじゃないんだよねー。」
「うっ…。」
「聞くだけ聞くよ?言ってごらん?」
トキは優しく諭してくれていますが。
さて、受け入れてもらえるか。
「…アキトに、囲地で戦ってるって聞いたから。敵を一箇所に全部集めて私に戦わせてほしいの。」
私はこの二本の剣に見合う力を付けたい。
つまり、双剣の練習がしたい。
だから炎は最小限、剣に纏わせる程度で済む。一石二鳥のお得な作戦。
ただ、既にお疲れだろうサク達に敵を誘導してもらわなきゃいけないので。そこだけは少し心苦しい。
「…なるほどね。」
「無理ならいいの!私最悪自分で誘い込むし!」
「それだと逃げられる可能性も否めなくて、逆に地の利を奪われる可能性もあるって気付いてるからうちに頼もうとしたんでしょ?」
「お…仰る通りです。」
何もかもお見通しですよねー。
「やってもいいよ。」
「…え!?」
「実際、そろそろサクを下げてアキトを上げなきゃいけない頃合いだし。アキトの馬鹿が怪我しなきゃまだ良かったんだけどね。どっちにしたって早く終わるなら助かるのはこっちだよ。」
アキト、馬鹿って言われてるよ。
でも私のお願いを聞き入れてくれるようでよかったです。
「…あと大変言いにくいんだけど、ちょっとソルの敵将と話をしようと思ってて。どんな人かは知らないけど大将首はあげられないかも。」
「えー、恩賞に響くじゃん。」
「そこを何とか!私ここに来る前にもソルとやり合っちゃったから!逆恨みされて攻められたんじゃまた迷惑掛けちゃうから!!」
「…どこまでも優しいね、リンは。」
優しいだなんてとんでもない。
アレンデールに攻め入ったソルの軍と、今回アキト軍が相対してる軍はまた別物。
これは寧ろ、私の我が儘だ。
「ごめんね。」
「んー仕方ないね。ここでリンのお願い聞いとかないと後でアキトが面倒だから。」
アキトが面倒???
どう考えてもアキトより圧倒的優位にいるトキ。でもトキはいつも、アキトのためにと動いている気はしていた。
私の知らない、二人の絆があるんだろう。
「り、リン!」
「ん?スーザン様どうしたの?」
そろそろトキと出発しようと思ったところで、スーザンが私を引き留める。
「…武運を祈る。あと…様はいらん。」
「……。」
もう、これ誰???

