集中もクソもない。
私は素直にまた急降下。
「な、にしてんのっ!?」
「ストップ。この高度でいいです。そのまま真っ直ぐ。」
「もう歩けばっ!?」
なんて皮肉を言いつつも、シオンの的確な指示を自然と聞いてしまっている自分を嘆く。
「…あー私の馬鹿。」
「良く出来ました。」
「うるさい。もうシオンなんか知らない。話しかけないで。」
「本当、このまま引き留めてしまいたい気持ちが厄介だな。」
背の高い木々達が多い茂るもので、私はもう嫌になる程慎重に行かないと山火事にし兼ねない。
ただでさえ瞳の色を変えてしまった。
…気力が削られる。
「あー、もう…しんどい。」
「もう少しです。」
人の気も知らないで。
「城の連中に見つかると、貴女を利用されるのが目に見えるんで。」
「…亡命させるって言ってたくせに。」
「あれはただ、この力をひた隠して側に置いとこうと思っただけ。」
「そ、側に…置いてどうするの。」
つまり、私は勘違いしていたらしい。
火龍の力をエゼルタが所有したいという浅はかな考えではなくて。寧ろ力を隠して私を側に置きたかった…らしい。
「待って!やっぱ言わなくていい!」
「…考えてなかった。」
「はい?」
「側に置いてどうするか、ね。」
考えてなかったんかい。
思わず勝手に焦って止めてしまった自分が恥ずかしい。
だって、トキの言ってた通り。
シオンが私を好きだったら…なんて。そんなことがあったら困るんですよ。

