「貴女も世界に知られてる異名があるでしょ。」
「え?」
「戦神。」
「…それ、異名だったの。」
ハルは鬼人とかカッコいいじゃん。
私、戦神って…。
異名って誰が決めてんの。変えてほしい。私も人がいい。神やだ。
「…違うのがよかった。」
「確かに合ってないですね。」
「異名なんてやっぱりくだらないね。考えた人はよっぽど暇なんだね。」
「それは同感。」
結局、シオンのもアキトのも分からないまま。
でも異名に関して信憑性がなくなった。同時に私の興味もなくなった。戦神が異名になるレベル。別に知らなくても困らない。
「…そろそろ降下するから道案内お願いー。」
「分かりました。」
この後は出来るだけ人目に付かない場所をシオンに任せて、言われるがままに進みます。
郷に入りては郷に従え、です。
「地図で見た通り山多いねー。」
「…王都も近いんで、そろそろ山に隠れた方がいいかもしれません。」
「え!?山の中飛ぶの!?」
「貴女が見つかるの嫌なんで。」
山の中なんて、木を避けながらで真っ直ぐ飛べないしめんどくさい。
余計に疲れるし私の疲労は計り知れない。
「誰に見つかるのが嫌なの?」
「…全員。」
「…そんなの無理だって。諦めてこのまま行こうよ。」
「ダメです。」
誰にも見つからないなんて無理。
山の中に身を隠したって、見つかる時は見つかるんだし。
「山の中だって誰もいないことないでしょ。」
「さっさと降りて下さい。」
「はっきり言うけど私の労力とんでもないからね!?障害物避けるだけじゃないからね!?今熱さ感じてないだろうけどこれちゃんと炎だからね!?」
不燃とは言え、気流発生のために可燃と織り交ぜて温度調節してるだけで。
本来これだけでも相当疲れるんだからね!?
「…頑張って下さい。」
「この鬼畜。」
「…鳥の調教は意外と簡単なんだ。」
「は…っ!?」
急にまた違う話かと気を取られると。
そんな私の額に、シオンが優しいキスを落とす。

