ぼちぼちエゼルタの国境を越えた頃だろう。


ここで私の炎はほとんど空っぽになってるのが自分で分かった。





「…っ。」


「無理させてすみません。」


「…想定内だから大丈夫だよ。出来るだけ粘ったのは、限界の幅を広げたかったから。」




ただもう自身の炎で飛ぶのは無理そう。


私は目を閉じて、内に住む火龍さんを呼び起こす。





「…炎補填するねー。」


「…その瞳、消耗するって言ってませんでした?」




紅の瞳。


シオンは見るの二回目ですよね。連合軍の時じっくり近くで観察されたのを思い出した。




「まあ、戦ってるわけじゃないからそこまで消耗しないよ。」


「…やっぱその瞳も気になる。」


「色変わりの瞳なんて珍しいもんねー。」


「この状況は便利ですね。前回と違ってじっくり観察出来るんで。」




シオンがそんな不思議なことを言うので、思わず私もシオンを見る。


端正な顔のシオンと、自然に目が合う。




「観察って私を?」


「はい。」


「…シオンの興味を惹けるほど、特に何も出来る気がしないんだけど。」


「そのままで充分です。」




そうですか。


シオンの瞳は、一見茶色っぽい一般的には少し色素薄めな感じに見えるけど。



この距離でよく見たら、琥珀色っぽいかも。





「…シオンはやっぱ、狼っぽいね。」


「お陰で変な異名まで付けられて俺は迷惑してます。」


「異名って?」




ハルも世間では鬼人と呼ばれてる。


シオンにもまさか異名があったなんて。私は本当に世間のことをまだ知らなくて情けない。





「…さあ?」


「えー教えてよー。」


「アキトもありますよ。」


「そうなの?」




あるのが普通なのか。


ん?そうなると私は?異名あるのかな?