落ち着け私。
何も考えるな。平常心だ。私は今木にしがみついてるだけだ。大丈夫。私なら出来る。
「…持ち直しましたね。」
「意地です。」
「場所分かってます?」
「勿論です。」
かなり取り乱しましたが、アレンデールの炎を頼りに頭の中で地図を展開させると方向は問題ございません。
そしてアレンデールから少し離れたので、もう高度はそんなに上げません。
「いつまでそうしてるつもりですか?」
「…もうちょっと。」
未だ引っ付いて離れない私。
本当にもう少しで落ち着けそうなんで、大人しく待ってほしいです。
「さっき疲れるって言ってたんで、変えた方がいいなら変えますけど。」
「…じゃあ最初からそうしてよ。」
「…ハルが手放せないのは貴女に問題があるようにも思えてきました。」
「急に何の話。」
シオンは溜め息を吐く。
「人を狂わせるほどあんたが可愛いって話。」
ああ。
もう勘弁してくれ。
「っ…。」
「飛んでると感情が表に出て面白いですね。」
ゆらゆらと安定もしない。火照る顔がまだ全然熱くて回した腕も緩められない。
だからシオンとは飛ばない。
これは私の教訓にします。もう絶対飛ばない。
「あー。しんどいー…。」
「…もう何も言わない。このままじゃアキトのとこ戻る前に貴女限界来そうなんで。」
「確かに言えてるー。」
「だから落ち着いたら抱き直すんで、早く落ち着いて下さい。」
ぽんぽんと。
私を宥めるように背中を叩く優しさが、今は沁みます。
こうなったのシオンの責任なんですけどね。

