それにしても落ち着かない。
私にだけに向けられる優しさも、私と結婚したい紛いなことを言ったさっきの言葉も。
…敢えて気にしないようにしてたのに。
「エゼルタの王都の場所も覚えさせますよね。」
「う、うん。」
「城に飛ばされると厄介なんで、とりあえず自宅に向かってください。」
「シオンのお家…って、ご実家ってことだよね。」
そうだとシオンが肯定。
嫁ぐだ何だと言われた後に実家!?いやけど興味はあるぞ!?
…シオンとトキの実家。
それはつまり軍師の総本山。知識の山。
「…またグラついてる。」
「ごめんなさいっ!」
揺れているのは体勢と、私の心。
日がある内に帰らなきゃいけないのは分かってるのに、実家も漁りたい!!!
「…家には上げませんよ。」
「…けち。」
そんなこと分かってますよ。
なのにいちいち釘を刺されるので私も思わず不満が漏れる。
それが癇に障ったのか、この高度にも関わらずシオンか突然私の抱き方を変える。
「っ!?」
よりにもよって縦抱き…!?
近いし近いし近いし。さっきの一件も相まって私の集中は大きく乱れる。
「…やっぱこれ好きだった?」
「〜っ!!!」
シオンさん、普通に喋ってますけど。
只今急降下の真っ最中です。
「っもうシオンとは二度と飛ばない!!!」
叫んで怒りや恥を発散させて。
とりあえず縦抱きにされたので顔を見られたくないのと、落ちないようにしたいのとでそのままシオンの首に腕を回してしがみつくしかない私。
「…何それ、可愛い。」
「っ、もう黙ってもらえませんか!?」

