今までは亡命亡命と。
そんな風に言ってたくせに。
ここに来てエゼルタで私を嫁にもらう発言に変わったシオン。
「…飛んでくれません?」
「えっ、あ…はい。」
呆然としているハルにごめんと心の中で謝って。
先を急ぐ私は、この何とも言えない感情を払拭するように舞い上がる。
「……。」
「……。」
また雲の中にすぐ隠れ込んで。
頭の中に入れたエゼルタ王都の方向へ進んでいるつもりの私。
合ってる。合ってるはずだ。
集中。絶対集中しなきゃいけない。
「…あの。」
「……。」
「めちゃくちゃ揺れるんですけど。」
「黙っててくれるかな!?」
私だってこの高度で、雲の中で安定させるの難しいなりに頑張ってるんですよ!?
「…嫁ぐの嫌でした?」
「その話は…今無理っ!!!」
案の定ぐらりと体勢が崩れる。
「っ…ご、ごめん。」
「…抱き方変えて良いですか。」
すぐに何とか持ち直した。
現状、俵担ぎのように私を肩の上に抱えているシオン。私の目の前はシオンの背中。
「無理無理まだそのままで。今変えられたら真っ逆さまになる。」
「危なっかしい鳥だな。」
「…誰が鳥だ。」
鳥で言えば、クロはちゃんと場所を覚えられただろうか。
「…貴女の鷹、ちゃんと城記憶してますよ。」
「本当!?」
「ついてに俺も自分の鷹に覚えさせました。開戦前に異変があればハルに知らせておきます。」
「あ、ありがと。」

