「怖え脅しだな。」


「大丈夫!ハルだもんね!私の出る幕はないんだろうなってちゃんと分かってるよー。」


「ああ。お前を心配させることなんか何もねえよ。」




そうでしょうね。


私のハルは最強なので。当然に負けるなんて思ってない。





「ってことで!ハル!私今日は本当に急いでるの!」


「無理。」




どうにも離れないハル。


シオンをチラッと見るともう今にも寝るんじゃないかってくらいボーッとしてる。



…助けてくれそうにない。





「…そういや、俺の将印は?」


「あ、置いて来た。」


「置いて来んな。肌身離さず持ってろ。」




その意味も。


知ってしまったけど、たぶんそれをハルに言っても気にしないんだろうな。



この場所で交わしたあんな約束を、覚えてくれていただけでも私は嬉しかった…なんて。そんなこと恥ずかしくて言えないけども。





「次会う時はちゃんと付けとく。」


「…ああ。」


「じゃあもう本当に行くね!」


「嫌だ。」




エンドレスじゃん。





「…シオン起きてるー?」


「…くだらない話終わりました?」




相変わらず毒吐きますね。


けどここはもうシオンに強行してもらわないと、ハルは一生私を離してはくれない。





「ハル、また絶対来るからね!あとハルにお手紙書けるようにクロもいるからまた書くね!」


「俺まだ納得出来てねえ。クロって何だ。」


「鷹っぽい子。虐めないでね。」


「…あーリンー。」




項垂れるハルを他所に、シオンが一瞬の隙を突いて私をハルから引き剥がした。


…そこそこ強引に。




「ちょっ…痛いんですけど!?」


「もうキリないんで。これでも我慢した方です。」




お腹に腕を回されてグイッと後ろに引かれたので、内臓飛び出るかと思った。


そのままシオンは私をやや乱暴に担ぐ。





「ハル、悪いけど貰ってく。」


「殺す。」


「ようやく彼女が城から出て来たんで。俺はもう遠慮するつもりないから。」


「ぶっ殺す。」




険悪な雰囲気。


お互いに殺気が漏れ合う何とも異様な緊張が走る。




「やっとお前から奪えた。」


「てめえ、マジでその首斬り落とすぞ。」


「俺もそうしたいけど彼女と約束したんで出来ない。でも、もしまたあの部屋で一人で泣かすようなことになるなら約束は反故。」




私がまた檻の中に戻ることがあれば。


それが私とのハルを討たないという約束が意味を無くす時だと。








「その時はエゼルタに嫁いでもらおうかな。」