シオンに対して溢れんばかりの敵意を露わにするハルの腕を、私はグイッと引っ張る。
「あー…。やっぱだめだ。」
「あ?」
久々に。
ちゃんと面と向かって、ハルの姿を見てしまえば。
やっぱりその腕の中に飛び込んでしまう私は、いつまでも兄離れ出来ない子供だ。
「はるー。」
「…可愛すぎる。」
「会いたかったー。」
「…もう俺死んでもいい。」
腕の中に飛び込んだ私を、今度はしっかり力加減して抱き締めてくれるハル。
もう完全に二人の世界に入ってしまった私とハルを、怪訝そうに見るシオンには悪いと思ってます。
「…よし!ハルパワーありがとう!」
「俺はまだ足りねえ。」
「えー長い。」
「まだまだあと十年はこのままがいい。」
ハルが私を離そうともしないので。
もうこのまま話してしまおうか。
そして私と同じ考えに至ったシオンが、先にハルに戦の話を始める。
「…ハル、戦。」
「知らん。俺は戦よりリンがいい。」
「ソルの第一将、とりあえず討って来い。」
「勝手にやってろ。お前に指図される筋合いはねえ。」
シオンの話に否定的なハル。
「…このままだと彼女、ソルに奪われるぞ。」
「奪えるもんなら奪ってみろ。リンは誰にもやらん。」
「もう動き出してる。早めに手を打たないと手遅れになる。」
「んなことで戦してたらキリねえだろ。リンを狙ってんのはソルだけじゃねえよ。」
ハルは首を縦には振らない。
確かにハルの言うことも分かる。ハルの考えの方が理に適ってる。
シオンは色々先読みしすぎて不安に思ってるんだろうけど、私もマサの件がなければハルに同感。
「…斬りそう。」
「あーシオン。ちょっと待って。」
「…これを説得出来ます?」
「うん。」

