(二)この世界ごと愛したい




シオンに対して溢れんばかりの敵意を露わにするハルの腕を、私はグイッと引っ張る。




「あー…。やっぱだめだ。」


「あ?」




久々に。


ちゃんと面と向かって、ハルの姿を見てしまえば。



やっぱりその腕の中に飛び込んでしまう私は、いつまでも兄離れ出来ない子供だ。





「はるー。」


「…可愛すぎる。」


「会いたかったー。」


「…もう俺死んでもいい。」





腕の中に飛び込んだ私を、今度はしっかり力加減して抱き締めてくれるハル。


もう完全に二人の世界に入ってしまった私とハルを、怪訝そうに見るシオンには悪いと思ってます。





「…よし!ハルパワーありがとう!」


「俺はまだ足りねえ。」


「えー長い。」


「まだまだあと十年はこのままがいい。」




ハルが私を離そうともしないので。


もうこのまま話してしまおうか。



そして私と同じ考えに至ったシオンが、先にハルに戦の話を始める。




「…ハル、戦。」


「知らん。俺は戦よりリンがいい。」


「ソルの第一将、とりあえず討って来い。」


「勝手にやってろ。お前に指図される筋合いはねえ。」




シオンの話に否定的なハル。




「…このままだと彼女、ソルに奪われるぞ。」


「奪えるもんなら奪ってみろ。リンは誰にもやらん。」


「もう動き出してる。早めに手を打たないと手遅れになる。」


「んなことで戦してたらキリねえだろ。リンを狙ってんのはソルだけじゃねえよ。」




ハルは首を縦には振らない。


確かにハルの言うことも分かる。ハルの考えの方が理に適ってる。



シオンは色々先読みしすぎて不安に思ってるんだろうけど、私もマサの件がなければハルに同感。





「…斬りそう。」


「あーシオン。ちょっと待って。」


「…これを説得出来ます?」


「うん。」