(二)この世界ごと愛したい




そんな中を飄々とした立ち振る舞いで、シオンは余裕のあまりこの場でクロにこの場所を覚えさせるよう羽ばたかせる。




「…この機会だし俺も便乗するか。」




シオンも笛で自身の鷹を呼び寄せ、クロと一緒に場所を覚えさせることに。


この余裕ぶりに衛兵たちは怒る。





「舐めやがって…!」


「…お前等は無能か。早くしろ。」




まだまだ無礼なシオン。


往なすだけの剣にもイライラが募り始める。






「…ハル様は留守だ。我々が貴様を捕える。」


「あんた確かハルの軍の将か。」


「ああ。」


「分かりやすい嘘はいらない。さっさとあの馬鹿呼んで来い。」




ハルは私兵を持っていて。


その軍にはハル直下の将軍も数人いる。


内一人がシオンの前に現れて、ハルは留守だと言い放つものでシオンもどんどん口が悪くなる。元々悪いけど。





「ハル様はお前の相手をする程暇ではない。」


「…追放された姫の話だとしてもか?」


「……。」




私の話題になると突然。


その場は静寂に包まれる。剣を持ったまま固まる衛兵。そして眉間に皺を寄せるハル軍の将。






「ハル様に伝令を。」


「御意。」




改めてハルの元に衛兵が走る。


その間、双方剣は収めてただハルの到着を待つことになった。



私の読み通りバレバレな居留守を使おうとしたハルに、シオンは呆れるしかない。








「…こんな敵国に単身で。自殺希望なら他所で勝手にやれよ。」




大刀を片手に持ったハルが現れる。