(二)この世界ごと愛したい




やっぱふざけてる自覚あったのか。


そりゃあそうだ。この体制お互いしんどい。無駄に近いし。




シオンがそっと、器用に横抱きにシフトしてくれた。





「…苦手な割に慣れてるよね。」


「は?」


「…いや、何でもない。」




女の人の扱いとか。


それこそ邪モードの件とか。



私よりも遥かに達者な気がするけど、そこは聞かないでおこう。




「あー、やっと身体楽ー。」


「…すみません。」


「この余力でもう一気に行くねー。」




出力最大。


アレンデール裏山。




大好きなハルとの思い出の地へ。






「…はる。」




風に乗って、この声が届くと嬉しい。






「…そんなに嬉しいですか?」


「シオンはトキに会うの嬉しくない?」


「全く。」


「…ダメなお兄ちゃんに戻ってる。」




私はハルに会えるなんて、そんなことだけで嬉しい。


やっぱり私にとってもハルは特別に大切な人で、叶うならずっと一緒にいたいと思える人。




私は目的地までしばらく飛び続け、恐らくその上空には到達したものと…思われる。


なんせ下まだ見てないからズレてるかも。





「降下しまーす。」


「はい。」




私は纏う炎を、消し去った。



途端、急降下…というかただただ落下する。


致し方ない。炎は目立つのでこうでもして降りないと目立ってしまう。




地上を視界に捉えると場所はそんなにズレていなくて安心した。






「…シオン。」


「…?」


「綺麗な世界だね。」




雨上がりで空気も澄んでる。


緑も溢れてる。



…私の守るべき、美しい世界。





裏山から若干照準がズレていたものの、風が上手く調整してくれて。


幸運なことにちゃんと裏山上空に到達。






「これが神風、か。」


「え?」


「…いえ。」




最後に私は高火力で炎を放出。


怪我しないよう落下の衝撃を和らげる。





「…ふぅ。」


「お疲れ様です。休んでて下さい。」


「んー、そうする。」


「俺はアレンデール城行ってきます。」




私はもう言われるまでもなく、その場にごろんと横になる。


シオンはそのまま城へ向かう。




二人分浮かすのやっぱ疲れる。これは本気で休まないと次エゼルタなんて…もう今は考えたくない。