「…雲初めて触った。これ触れてるのか。水蒸気で出来てるってこういう事か。」
「……。」
「雷雲があれば剣に感電するのか。」
「……。」
シオンが珍しくうるさい。
私は天空を猛スピードで駆け抜けるのに全神経注いでいるのでそれどころじゃないんですよ。
「天候は貴女の方が詳しいですよね?向こうにある雲は雨雲ですか?」
「ちょ…今集中してるから…。」
「性質が違うように見えるんですけど、この雲との違いは?」
「だ、だから聞いて…時間押すから割と急がないといけないんだって。」
そう伝えてもシオンの興味は止まりそうもないので。
私は渋々スピードを落としてシオンの問い掛けに、大雑把に答えていくしかなくなった。
「へー。あれが積乱雲。」
「あの雲には近付けない。気流乱され兼ねないし、それこそ感電する可能性もある。」
「面白い。貴女といると本当に世界が変わる。」
「…大袈裟だって。」
シオンもそれはそれは博識で。
特に戦に関しては知らないことなんて全くないのではないかと思えるほどの知識がある。
軍師一家ならではなんだろうけど、私にはそんな知識の方が現実的で羨ましいと思えます。
「…ハルにどうやって会うの?」
「普通に正面から入るつもりですけど。」
「私城には行けないよ?」
「一人で行って来ます。貴女のいる所まで連れて行けば良いんですよね。」
…そんな簡単な話かな。
「それより俺は戦を承諾させる事の方が難しい気がしてます。」
「完全に私と逆の見解だね。そっちは寧ろ簡単だよ。ハルに会えるかどうかの方が難しいって。」
「貴女の名前出せばハルは容易く動かせる。」
「その名前を出す相手がシオンだから容易くないんだよ。たぶんハル怒るよー。」

