アキトは私を抱き締めたまま離さない。
そしてそろそろトキが来てしまいそうで、私は離してほしいと思ってる。
「…アキト?そろそろ離れない?」
「なーんか離したくねえのはあれだな。お前がそんな女らしい格好してるからだなあ。」
「また邪。」
「俺は邪上等なんだよ。」
抱き締める腕を少し緩めたかと思えば、アキトは私の顔を見る。
この距離に身構えてしまうのは、もうその気持ちを痛いほど知ってしまったから。
「よ、邪は嫌っ!」
「逃げれるもんなら逃げてみろって言ったろ。逃がすつもりもねえんだけど。」
そう言って徐々に顔が近付いてくる。
逃げようにも身体は離してもらえていない。
そんな私に助け舟かの如く、部屋のドアをトキが開けたのを視界に捉えた。
…しかし。
バタンと閉まったドア。トキはドアの向こう側。
「とっ、トキっ…!!!」
私の叫びも虚しく塞がれた唇。
…トキの馬鹿っ!!!
なんでこの状況で見放すの!?
トキはアキトの味方なんだっけ。アキトと私が恋愛に発展するのが理想なんだっけ。
「んんーっ!」
「…お前、色気のねえ奴。」
私のあまりの暴れっぷりにアキトも思わず離れる。
実はこのアキトさん、大奥というお色気の世界から帰還を果たしているのでこの違いに思わず笑えてしまったそうです。
それを知らない私はただただ真っ赤になって怒るだけ。
「もう出てくっ!!!」
「悪かったって!怒んなよ!」
「知らない!アキトもトキも信じらんない!」
私が怒り任せに声を荒げるので、流石にトキも見兼ねて部屋に入ってきた。
…目が開いてるのかも怪しいシオンと共に。

