「剣置いて行くかあ?」
「…たまにはいっか。じゃあアキト、研師さんにこの剣二本ともお願いしてきてくれる?」
「金は?」
「…ツケ払いで。」
お金の心配さえなければ行ってくれるようで。
そんな優しいアキトに大事な剣を託す。
「アキトって優しいよねー。」
「悪いがこれは下心だ。」
「え?」
剣を研師さんに頼むのが下心!?
めちゃくちゃ美人な研師さんだったりするの!?
「これ預かってたら、お前何が何でも帰ってくるだろ。」
そう言ってニヒルに笑う。
「…ばか。」
今朝は抱き締めることもなく、淡々としてたくせに。別に抱き締めて欲しいわけじゃないけども。
アキトのこのよく分からない押し引きが、私はどうも読めなくて苦手だ。
「リン。」
「ん?」
そして今度は。
ふわりと私を抱きしめる。
「無事に帰って来い。」
「…やっぱ苦手だ。」
「はあ?」
「相変わらずアキトは読みにくい。」
無意識にでも読もうとする私が悪いんですが。
「お前にはまだ早えってことだ。」
「いつか読めるようになるってこと?」
「もう少し大人になれば分かるかもなあ?」
「…私そんなに子供かなー。」
ハルも私をこんな扱いする。
でも私を抱き締めるこの腕の強さは、ハルとは似て異なる。ハルはこんなに優しくない。
「でもさ?私もるうに教えてもらったんだけど、距離感って大事らしいよ?」
「距離感?」
「…その、アキトは…辛くないの?」
「あーそういうことか。俺はルイとは違えからなあ。」
私への想いを断ることになってしまって。
それにも関わらず私と従来通りの距離感で過ごすことは辛くないのかと心配になった。
けど、新しいパターンがあるのか。
もう恋愛の難易度どうなってんの。私理解するの絶対無理だよ。
「ルイの気持ちは分かるが教えてはやらねえ。」
「…うん。別にいい。」
「俺はこの距離でいい。」
「う、うん。」
…この距離って、近すぎないか。
抱き締められてるから距離なんてほぼゼロですが。

