「…リン。」
「……。」
「おい、朝だぞ。」
「…ん。」
アキトの声が聞こえる。
すぐ近くから。
だけど、私の瞼は中々開こうとはしない。
「飯食って早く出発しねえと、大移動してここに戻って来れねえだろ。」
「…んー。」
「早く起きろ。」
嫌々ではあるが、薄っすら目を開けてみる。
通常運転の腕枕。近い距離にいるアキト。そして何故か抱き締められてはいない身体。
「…ん?」
「何だよ。」
いつもなら、こんな状況下では私は身動き出来ないくらい締め付けられてることが大半なので。
逆に不思議に思えてしまう謎。
「…ひっぱ、て。」
「……。(クソ可愛い。)」
面倒見のいいアキトに引っ張り起こしてもらい、私はどうにか起きることが出来ました。
清々しくはない朝です。
「リンちゃーんっ!」
「ハナ、ちゃん。」
今日のお洋服を持って笑顔でやってきたハナちゃん。
最近は色んなパターンを私に着せるのがマイブームだと言うハナちゃん。
そんなことで喜んでもらえるなら私はどんな服でも着ます。
「じゃーん!今日のお洋服です!」
「…お、おお。」
「今日はお出掛けするって聞いたからお洒落な服にしたよ!」
「あ、ありがと。」
淡い色のワンピース。
丈は長めなので飛んで移動するのには差し支えないだろうけど。
レースが可愛い女の子らしい服。
「じゃあ広間で待ってるね!リンちゃんお着替えあるからアキトさん先に行きましょう!」
「…ああ。」
二人が退室して、部屋に一人残る。
…これ着なきゃダメか?
「ハナちゃんのためだ。」
頑張れ私。
我が儘言うな私。
意を決して服を着替えて、朝の支度を整えて私は恐る恐る広間へ向かう。

