こんなことを次々に繰り返している内に、また酒瓶が空になっていく。


ここで本来止めてくれるはずのトキは、現在席を城の守備兵に呼ばれて席を外してしまった。



だから引っ切りなしに隊士から言い寄られる。





「リンちゃーん。」


「うん?」


「なあ、一晩くらい良いだろ?」


「…だめ。」




酒の力にはまだ負けません。


と言うか、もう断り続けるのもめんどくさくなってきたので誰かと寝るって決めてしまった方が早いのではないかと思えてきた。





「…私トキと寝る。」


「トキさんのご迷惑だって!やめときな!」


「め、わく?」


「そうそう!トキさんは忙しいしリンちゃんと言えども女が近付くのは落ち着かねえって!」




コイツも酔っ払いのくせに理に適ってるな。


確かに私とは、休みたい時に休めないから嫌だってトキも言ってた。




「…トキだめ、だね。」


「だから俺が一緒に寝てあげるって!」


「うーん。」




私がどうしたものかと悩むと。


隊士さんはグイッと私の肩を引き寄せる。




「あー可愛い!」


「おい!お前ずりいぞ!みんなのリンちゃんだぞ!?」




わちゃわちゃと何やら揉め出した。


私はまたお酒であまり力が入らなくなってきたので、もう抗わず撓垂れ掛かる。





「んー。ちょっとうるさい。」


「リンちゃんごめん!お前等静かにしろっ!」




私はそれでもチビチビと飲み進める。




「てか、リンちゃんはアキトさんとどこまでいったの?」


「へ?」


「お前馬鹿だなー。あのアキトさんだぞ。そりゃあ毎晩愛し合ってるに決まってるよな?」


「あ、あいっ…!?」




急に過激なことを言われて私は思わずビクリと震える。それと同時に熱もぶり返す。


とは言っても、お酒の力で顔は元々熱い。





「うわ、何この反応…!」


「アキトさん羨ましいっ!!!」




再びバタンバタンと私の周りは倒れ込む人が続出する。





「あー堪んねえ。」


「っ!」




私の肩を相変わらず抱いたままの隊士が、もう片方の手で私の足に触れる。



…邪ですね。


この城は本当にアキトに良く似て邪で溢れ返ってるな。





「リンちゃん、ちょっと抜けね?」


「っや…。」




急に耳元で喋られるもので、私は反射的にこの人から離れる。


そこまでベロベロじゃないですよ!今日はっ!!





「もう可愛すぎるって。」


「しつこい!私もうお部屋もどるっ!」


「んなこと言うなってー。」




離れた私を追いかけるように、再び私へ手を伸ばす隊士の手が止まった。


と言うか、止められた。





「シオンさん!?」


「…アキトは隊士の躾が下手だな。」


「なっ…あんたトキさんの身内だからって隊長を悪く言うとただじゃおかねえぞっ!?」


「身内かどうかなんて関係ない。俺は彼女に何かあるなら弟の軍でも潰せる。」




シオンがどうしてめっちゃキレてる。


それに煽られて隊士の皆さんが闘志に燃えている。



トキは、まだ戻ってない。





「潰せるもんなら潰してみろ!!!」


「そう言ってもらえると有難い。さっきから腹立たしくて仕方なくて。」


「んだとっ!?」







「彼女に触ったその腕、両方斬り落とす。」





シオンは、私以外には優しくないと言ったトキの言葉を思い出した。


これが、シオンの本来の姿。



孤高の狼の如く鋭い目で敵を捉えて離さない。冷たい殺気が広間を覆う。





…私だけが知らないシオンの姿。