マサは薬を受け取るとすぐに帰国すると言い、再び忍の足で移動を始めた。
レンの治療の甲斐あって、ソルからセザールへ向かうよりも、アキトの城からここへ来るよりも遥かに軽い足取りで帰路を辿る。
「レン様お疲れ様ですー!」
「あ、うん。」
一仕事終えたレンに、女官達が食事の準備が出来たと声を掛けにくる。
「アキト将軍も良かったらお食事ご一緒しませんか!?」
「いくら言い寄っても俺は靡かねえぞ?」
「お近付きになれるだけでも嬉しいんですっ!」
「…将印なくても意味ねえなあ。」
そう言ってレンを見ると、既に女官にもみくちゃにされているレン。
アキトは、ある意味私をこの城に来させるのは止めた方がいいかもしれないと案ずる。
「…リンが見たら何て言うか。」
「そのリンさんって、さっきの患者様を紹介くださった方ですよね!?レン様の何なんですか!?」
「何って…。」
俺に聞くなと言わんばかりのアキトを、今度はレンが見て声を掛ける。
「リンは俺のお嫁さん。」
「ええ!?レン様は独身に戻られましたよね!?」
「うん。でも俺リン以外とは結婚しないって決めてるから。」
「そんなあっ!」
そう言い切ったレンを見て。
アキトも無意識に笑う。
「言うようになったなあ。」
「アキトの気持ちもちゃんと聞けたし、俺もスッキリしたよ。」
「そりゃあ今まで悪かったなあ。」
「俺もその時が来たら少ない体力で頑張るけど、アキトも絶対にリンを守ってね。」
アキトは当たり前だと呟いて。
そんなレンとアキトの姿をもう生気なく、意識もあるのか怪しく落ち込むしかない女官の方々。
この日で城のお手伝いを辞めた女官は数知れず。
しかしまたレンの魅力に惹きつけられて新たに入城する女官も数知れず。
…結局レンの城は、大奥と化す。
まだ滞在を考えていたアキトだったが、私に放たれるという追手が気になるため。
レンとの時間を少し過ごしてから城へ戻ることになった。

