そんな二人は、違う疲労でげっそりと朝を迎えて。一緒に食事を摂ることになった。
「…アキト、大丈夫?」
「…ああ。てかお前マジで大奥作り上げてんぞ。ここの女達強すぎる。」
「ごめん。」
「リンに悪影響すぎる。」
「…それアキトが言うの?」
二人で食事を食べ進める間も、女官達が二人を囲んでキャッキャと盛り上がる。
「レン様、今日は私と一緒に過ごしてくださいませんか?」
「何言ってんのよ!私よ!あんたは引っ込みなさい!!」
「レン様、今日も大変お美しいです!」
「私夜にマッサージいたしますわ!是非お呼びください!」
レンは疲れも相まって苦く笑うだけ。
どこからともなく集まって、勝手に城で世話を焼いてくれている女達に感謝さえしている優しいレン。
「アキトさん、いつお城へ戻られるんですか?ずっと住んでくださいませんか?」
「今晩は私がお部屋に伺いますね!」
「ちょっと!あんた何言ってんのよ!次の番は私って決まってるのよ!!」
「あーん、アキトさんの色気堪んない!」
アキトもげんなりする程、女達の争いが醜く展開されている。
「お前等、ちょっと大人しくしてろ。」
「アキトさん冷たーい。あれ?アキトさん将印は?」
「本当だわ!?アキトさんどういうことですか!?」
途端に将印を持たないアキトが一斉に注目される。
アキトは特に慌てることもなく、狼狽える女達にニヒルに笑ってみせる。
「世界一の女に渡した。」
部屋中に悲鳴が響き渡る。
悲鳴から嗚咽に変わり、嗚咽から怒号に変わる。
「どこの女ですの!?」
「会わせてください!アキトさん!!」
「絶対に私の方がいい女です!!!」
諦めることを知らない女官達。
「アイツ以上の女がいるわけねえだろ。」
「そんなこと分からないですっ!」
「会わせるって言っても月の姫だからなあ。お前等じゃ足元にも及ばねえよ。」
「つ、月の姫…?」
こうして、先の話にはなりますが。
アキトの結婚についての流言が、その異名も相まって各地を巡ることになる。
…アキトの結婚相手は、“かぐや姫”だと。

