(二)この世界ごと愛したい




レンはそれを聞いて溜め息を吐く。




「分かってるならそうならないように動いてほしいよ。」


「…てか俺気になったんだが、女官の数多くね?」


「あー。何かみんな手伝いがしたいって言ってくれて。それに身寄りがない子とかも結構いるらしいよ。」


「いやそれ、目的お前だろ。」




再びきょとんと首を傾げるレン。


この城に滞在する数多くの女官達は、みんなレンを狙っていると感じたアキト。




「リンが来る前に何とかしとかねえと、大奥みたいになってんぞ?」


「大奥って大袈裟だな。みんないい子だよ。たまに寝込み襲われたりするけど。」


「全然大丈夫じゃねえじゃねえか。お前王宮出て人生謳歌してんなあ!?」


「…今日泊まるよね?そろそろ寝たら?」




アキトがうるさくなったので。


レンはまだ薬の調薬を進めたいこともあり、アキトを空き部屋へ案内するように女官に伝える。





「…レン。」


「ん?」


「俺、リンに関してだけはもうお前に遠慮しねえ。」


「…リンのことだけじゃなくて。他のことも全部、遠慮なんかしなくていいって。」




そう言って、アキトはレンの部屋を出る。


アキトが退室した部屋の中でレンは一人、また調薬に励む。




その表情がどこか明るいのは、アキトが遠慮をしないと言ったことが嬉しかったんだろう。


いつもアキトが自分に気を遣っていたことを、誰よりも知っていたから。




けど、その穏やかな表情も長くは続かない。







「…リン。」




ぽつりと名前を呟くと。


襲いくる寂しさと、ただ会いたいという切ない願い。




結局また夜通し作業に明け暮れて、そのまま机に突っ伏して寝てしまったレン。




そして空き部屋に通されたアキトは、大奥の女性に早速寝込みを襲われたとか襲われなかったとか。