レンはそれを聞いて溜め息を吐く。
「分かってるならそうならないように動いてほしいよ。」
「…てか俺気になったんだが、女官の数多くね?」
「あー。何かみんな手伝いがしたいって言ってくれて。それに身寄りがない子とかも結構いるらしいよ。」
「いやそれ、目的お前だろ。」
再びきょとんと首を傾げるレン。
この城に滞在する数多くの女官達は、みんなレンを狙っていると感じたアキト。
「リンが来る前に何とかしとかねえと、大奥みたいになってんぞ?」
「大奥って大袈裟だな。みんないい子だよ。たまに寝込み襲われたりするけど。」
「全然大丈夫じゃねえじゃねえか。お前王宮出て人生謳歌してんなあ!?」
「…今日泊まるよね?そろそろ寝たら?」
アキトがうるさくなったので。
レンはまだ薬の調薬を進めたいこともあり、アキトを空き部屋へ案内するように女官に伝える。
「…レン。」
「ん?」
「俺、リンに関してだけはもうお前に遠慮しねえ。」
「…リンのことだけじゃなくて。他のことも全部、遠慮なんかしなくていいって。」
そう言って、アキトはレンの部屋を出る。
アキトが退室した部屋の中でレンは一人、また調薬に励む。
その表情がどこか明るいのは、アキトが遠慮をしないと言ったことが嬉しかったんだろう。
いつもアキトが自分に気を遣っていたことを、誰よりも知っていたから。
けど、その穏やかな表情も長くは続かない。
「…リン。」
ぽつりと名前を呟くと。
襲いくる寂しさと、ただ会いたいという切ない願い。
結局また夜通し作業に明け暮れて、そのまま机に突っ伏して寝てしまったレン。
そして空き部屋に通されたアキトは、大奥の女性に早速寝込みを襲われたとか襲われなかったとか。

