…時は少し遡り。
城を出てレンの住むディオン国境付近の城へ向かったアキト。
途中降り出した雨に打たれつつも、予想していたことなので狼狽えることなく馬の足で前進。
「アキト将軍!?」
「おお、ご苦労だな。レンに会いに来ただけだから、構わねえでいい。」
城門の警備をしている衛兵と軽い挨拶を交わし、アキトは城の中へスムーズに入る。
濡れたままの身体で、城内に入るとすぐに女官達がアキトのお世話に取り掛かるため群がる。
「アキトさんすぐにお風呂ご用意しますね!」
「悪いな。レンはいるか?」
「レン様は今お薬の研究のためお部屋にいらっしゃいます。お食事はいかがされますか?」
「風呂の後レンの部屋に行く。飯はいらねえ。」
キャーキャーと。
女官達は大盛り上がり。
それはそうだ。この国の第一将であるアキトは、さぞかしおモテになることだろう。
女官達の案内の元、お風呂に入り雨に打たれた身体を温めて。
すぐにレンの部屋へと足を運ぶアキト。
「おーい、レンいるかあ?」
「…アキト?」
戦の時の面影は消えて。
今は薬草や医術書で溢れかえっているレンの部屋となった城の一室。
再会したレンは疲れた顔で、薬草を煎じている最中だった。
「…ひでえ顔。」
「アキトうるさい。」
「ちゃんと休んでんのかあ?」
「時間が勿体なくて。色んな症例があるから、探求したくて寝るのも食べるのも忘れる時があるんだ。」

