私のことしか見ない…と言うのは。
それはたぶん前回私を前にして、別の誰かを少なからず重ねていたことに気付いたのを指摘したから。
そして本当に、今。
…狼の目にはしっかり私が映ってる。
「ッ待って、しお…んっ…!」
一瞬で食べられてしまった唇にも。
掴まれている腕にも。
前回とは違う熱が走るのが分かった。
「…素直な人だな。」
「〜っ…!!!」
唇は離れたのに、言いたいことはたくさんあるのに、恥ずかしすぎて声にならない。
だって、もう全然違う。
「はっ、離して!!!」
「無理。」
この熱が、私を本気で求めてる気がする。
それに気付いた以上、こちらも本気で逃げなければならないと警戒心が剥き出しになる。
「…その野性の勘、流石ハルの妹だな。」
「う、嬉しくない!!!」
「でもここで貴女に手を出すとアキトとトキが煩いし。どうするか。」
「離れればいいと思うよ!!!」
私はダメ元で掴まれた腕を振り解こうと動く。
しかし、解けない。
「やっぱエゼルタに来て貰う時まで待つしかない、か。」
「…無性に行くの嫌になってきた。」
「へえ。」
「っ…!?」
シオンの手が。
今度は私の太腿を這う。
「ちょ…やめっ…!」
「こんな格好でいるのが悪い。」
「だって…っ!」
「だってじゃない。」
その手を退けてくれ!!!
「っもうごめん!!!」
私は半ば強引にシオンからの脱出を試みた。
スピード勝負なら私も負けません。それはもう身体能力を駆使して早業でシオンから離れる。
それをシオンがほぼ反射で追うので。
…逃げます。

