トキと城内を歩いていると、それはそれは被害拡大。
すれ違う人みーんな倒れていきます。
「…歩く凶器だ。」
「私のこと?」
「他に誰がいるの。みんな可哀想に。シオンに見つかる前に早く着替えてね。」
「え、シオンも倒れちゃう?」
そんな簡単に倒せる人じゃないと思うけど。
「倒れるで済まないよ。」
「…そうかな?」
「もっと恐ろしいことになるから……あ。」
トキが立ち止まって、その先に目を向けると気怠そうに歩いているシオンを発見。
服は着替えたのかもう裸じゃない。
「…逃げた方がいい?」
「逃げるより隠れた方が無難かも。」
「なるほど。」
「…リンこっち!」
グイッとトキが私を引っ張り走り出す。
夜ご飯前の兄弟の隠れんぼが始まりました。
「トキここは?」
「空き部屋だよ。シオンが寝泊まりしてるのも空き部屋なんだけど、ここはあんまり使わない部屋だから。」
「いつまで隠れるの?」
「うーん。とりあえず俺の部屋に向かってるんだろうから、やり過ごしたらすぐ移動しよう。」
ふむふむ。
流石、無駄のない作戦ですね。
「…作戦、か。」
「ん?」
「…トキの婚約破棄の策、シオンはどうして考えてくれないんだろ。」
「……。」
考えている気配も悩んでいる気配もない。
単にやる気がないとも取れるし、本当に打つ手がないのかもしれない。
それでも、諦めてほしくない。
「…例えシオンでもどうしようもないんだよ。」
「それって女の人が苦手なことと関係ある?」
「…やっぱりリンは読んじゃうよね。けど、シオンのことは俺は話せないよ。口止めされてるから。」
「そっか。」
口止めされてるなら聞けないな。
女の人が苦手なシオンとトキ。そんなトキと婚約しているユイ姫さん。
そして、それを回避出来ないシオン。

