(二)この世界ごと愛したい




トキと城内を歩いていると、それはそれは被害拡大。


すれ違う人みーんな倒れていきます。




「…歩く凶器だ。」


「私のこと?」


「他に誰がいるの。みんな可哀想に。シオンに見つかる前に早く着替えてね。」


「え、シオンも倒れちゃう?」




そんな簡単に倒せる人じゃないと思うけど。




「倒れるで済まないよ。」


「…そうかな?」


「もっと恐ろしいことになるから……あ。」




トキが立ち止まって、その先に目を向けると気怠そうに歩いているシオンを発見。


服は着替えたのかもう裸じゃない。





「…逃げた方がいい?」


「逃げるより隠れた方が無難かも。」


「なるほど。」


「…リンこっち!」




グイッとトキが私を引っ張り走り出す。


夜ご飯前の兄弟の隠れんぼが始まりました。




「トキここは?」


「空き部屋だよ。シオンが寝泊まりしてるのも空き部屋なんだけど、ここはあんまり使わない部屋だから。」


「いつまで隠れるの?」


「うーん。とりあえず俺の部屋に向かってるんだろうから、やり過ごしたらすぐ移動しよう。」




ふむふむ。


流石、無駄のない作戦ですね。




「…作戦、か。」


「ん?」


「…トキの婚約破棄の策、シオンはどうして考えてくれないんだろ。」


「……。」




考えている気配も悩んでいる気配もない。


単にやる気がないとも取れるし、本当に打つ手がないのかもしれない。



それでも、諦めてほしくない。





「…例えシオンでもどうしようもないんだよ。」


「それって女の人が苦手なことと関係ある?」


「…やっぱりリンは読んじゃうよね。けど、シオンのことは俺は話せないよ。口止めされてるから。」


「そっか。」




口止めされてるなら聞けないな。



女の人が苦手なシオンとトキ。そんなトキと婚約しているユイ姫さん。


そして、それを回避出来ないシオン。