そんなトキの憂いも知らず。
私は黙々と稽古に励み続けますが、何せこの残暑が酷く残る季節なもので。蒸発させた空気と相まって蒸し蒸しする。
「あっつー。」
軽くサウナ状態。
もっと涼しい時にやらなきゃいけない稽古っぽいなと気付きました。
…最後もう一踏ん張りしたらやめよ。
「ふぅ。」
現在雨を落としてないのは私の頭上だけ。
蒸し暑い中、最後にこの範囲を大きく広げてみたいと思います。
「…あ、無理かも。」
流石に今日始めて広範囲の雨粒に少量の炎を的確に当てて、さらにその雨の強さに合わせて蒸発させるなんて芸はまだ早かったらしい。
それは失敗に終わり。
火力を誤ったために当たり一面雲の中のような蒸気に包まれる。
「熱!冷た!!」
蒸気の熱、雨の雫が私に襲い来るもので。
矛盾した言葉を発しながらもうずぶ濡れの私です。
「リン、大丈夫ー?」
トキが心配して声を掛けてくれています。
失敗したの見られたかと内心落ち込みますけど、とりあえず今は屋根のある場所へ避難しよう!
「あー出来ると思ったのにー。」
「ずぶ濡れじゃん。」
「やっぱ範囲広げるのは難しいー。雨じゃなくて矢で練習すればまだ簡単そうだなー。」
「それは命に関わるからダメ。」
トキさんストップが入ったので矢での練習は諦めます。
そんな落ち込む私のずぶ濡れの頭にふわりとシオンが自分の羽織を掛ける。
「…濡れちゃうけど。」
「別にいいです。」
「…ありがと?」

