(二)この世界ごと愛したい





私の一人稽古が気になったトキとシオンが、屋根のあるところで見学していた。




「雨が自分に触れる前に全部蒸発させてるんだ。非現実的な稽古でビックリ。」


「……。」


「…にしても、今日のリンの格好可愛いよね。」


「…何も言うなって言われてる。」




確かに私が言いました。


シオンに服装に関しては何も言うなと。




「こんな姿だけ見たら普通の女の子だよね。」


「普通か?」


「格好だけね。煌びやかな王族としての立場を捨てて尚、国を守ろうとするなんてもう姫の鑑だよ。」


「…立場は捨てても血が王族だからな。」




どこまでも冷めているシオン。




「リンはこれからどこに行くんだろう。」


「…それは確かに気になるな。」


「シオン探ってみてよ。」


「…何で俺が。」


「俺より気になってそうだから?」




トキは意地悪そうに笑う。


それを見て、不服そうに眉間に皺を寄せるシオンはまた私へ視線を戻す。




「…彼女の動きは本当に読めない。」


「確かに難しいよね。リンって突拍子もないこと平気でやるし。何もかも大胆だし。」


「だから面白い。」


「…こっちが落ち着いてたら、リンがエゼルタに行く時、監視のために俺も帰国しようかな。」


「…来なくて良い。」




本気で帰国を考えていたトキは、シオンに止められて少し驚く。


それは今まで召集されることはあっても、帰国を止められたことはなかったからで。








「…その時は邪魔立てするな。」




不敵な笑みを浮かべる兄。


そして私を憐れむ弟。





「本当にもう既に良くないもの惹きつけちゃってるよ、リン。」