私の一人稽古が気になったトキとシオンが、屋根のあるところで見学していた。
「雨が自分に触れる前に全部蒸発させてるんだ。非現実的な稽古でビックリ。」
「……。」
「…にしても、今日のリンの格好可愛いよね。」
「…何も言うなって言われてる。」
確かに私が言いました。
シオンに服装に関しては何も言うなと。
「こんな姿だけ見たら普通の女の子だよね。」
「普通か?」
「格好だけね。煌びやかな王族としての立場を捨てて尚、国を守ろうとするなんてもう姫の鑑だよ。」
「…立場は捨てても血が王族だからな。」
どこまでも冷めているシオン。
「リンはこれからどこに行くんだろう。」
「…それは確かに気になるな。」
「シオン探ってみてよ。」
「…何で俺が。」
「俺より気になってそうだから?」
トキは意地悪そうに笑う。
それを見て、不服そうに眉間に皺を寄せるシオンはまた私へ視線を戻す。
「…彼女の動きは本当に読めない。」
「確かに難しいよね。リンって突拍子もないこと平気でやるし。何もかも大胆だし。」
「だから面白い。」
「…こっちが落ち着いてたら、リンがエゼルタに行く時、監視のために俺も帰国しようかな。」
「…来なくて良い。」
本気で帰国を考えていたトキは、シオンに止められて少し驚く。
それは今まで召集されることはあっても、帰国を止められたことはなかったからで。
「…その時は邪魔立てするな。」
不敵な笑みを浮かべる兄。
そして私を憐れむ弟。
「本当にもう既に良くないもの惹きつけちゃってるよ、リン。」

