「…うん。一通り…覚えたかな。」
伏し目がちだった目を開く。
インプットは申し分ない。
そして、ここを出た後の目的地もはっきり決めた。
「リン終わったー?」
「うん!…って二人ずるい!私もお菓子食べたい!」
「シオンが仲直りの賄賂くれた。」
「すごい!良いお兄ちゃんに成長してるー!」
私とトキが笑うと、シオンが機嫌悪そうにまた睨むけど。
どこか可愛く見えるのはたぶん、少しずつシオンとの距離が縮まった証拠なんだろう。
「トキ私にも一個ちょーだい!」
「いいよ。」
一口サイズのお菓子を一つ。
おねだりしてみたらいいよと言ってくれたのに、トキが持ったまま私の手には置いてくれない。
首を傾げるとトキはまた笑う。
「口開けて?」
「へっ!?」
どうやら食べさせてくれようとしたらしい。
トキの意地悪そうな顔を見ると素直に口を開けられない。
「じ、自分で食べる。」
「俺リンに食べさせてあげたい。」
「〜っな、なんでそうなるの!」
「可愛いから?」
トキの方が可愛いよ!!!
「いらない?」
「…いる。」
でもやっぱり食べたい私は大人しく口を開ける。
トキがお菓子をくれると、甘い味をようやく味わえて自然と笑えてしまう。
「…んま。」
「…なんか背徳感。」
「え?」
「リンを愛ですぎると俺まで怪我しそう。」
うん。
怪我は良くないね。

