完全に目が覚めた。


もうここからは眠れそうにない。





「…シオン将軍、私もやっぱり起きる。」


「そう言えば名前。」


「名前?」


「将軍無しで。」




…それこそ、何で?




「…うーん。それはいい。」


「何で?」


「もう今更だし?それに偉大な人じゃん?」


「呼ぶまでこのまま離さないって言ったらどうします?」


「呼びます。」




無論です。


この状況を打破出来るなら何でも良いです。



あっさり名前で呼ぶことを承諾した私を、パッと離して解放してくれたシオン将軍…元いシオン。





「…本読もうー!」




そう思い起き上がった私は、るんるんとアキトに買ってもらった本を開く。


シオンもここに置いたままの科学の本を持って、どうやら本当に一緒に読んでくれるらしい。





「うわー、本当にここで読むの?」


「一緒に読もうって誘ったの貴女じゃなかったですっけ。」


「ち、違うの。実は…誰かと一緒に本読むの初めてなの。」


「はい?」




嬉しすぎて緩む顔を押さえる。


それもお相手が憧れの人だなんて。私はなんて贅沢者なんだろう。







「ありがと、シオン…。」


「っ…。」




照れてしまったのか、シオンは再び寝台に上がり私に背中を向けて読書を始めてしまった。





「ねえねえ、私のこと嫌いではないんだよね?」


「…あーそうですね。」


「じゃあ背中借りるねー。」




せっかく背もたれがあるんですが、背もたれに向かってシオンが本を読んでいるので。


私がシオンの背もたれに、シオンが私の背もたれになるよう背中同士をくっつけて私も読み始める。






「…やっぱムカつく。」


「ん?なんか言ったー?」


「…何でもないです。」