シオン将軍の言葉を思い出す。





「ソルの第一将…か。」


「知ってるのなら話は分かるだろう。ここへも追手が来る。」


「…戦じゃなさそうだね。」


「隠密だ。戦にならずともリンに向けて放たれる。」




隠密とはまた興味のある話だけど。


そんなことを言ってる場合じゃなさそうだな。





「こんな傷だらけで。私に知らせるためにわざわざ危険なことしたの?」


「…拙者は問題ない。命を取られることはない。」


「とりあえず深い傷だけでも血を止めよう。ちょっと我慢出来る?」


「ああ。」




私はマサの傷を焼灼。


私も味わったこの止血法、加減はしてるとは言え痛くないわけはないことを知っている。



なのにマサは眉一つ動かすことはない。



忍者とはそれほど過酷な道を通らねば、出来ない職業らしい。





「ここに追手が来るまでどれくらい?」


「恐らく数週…ひと月は持たん。」


「なら大丈夫。そんなに長居はしないよ。」


「それでも万が一もあり得る。早いに越したことはない。」




敵対する同士として出会った私たち。


これだけの傷でここまで来ることだって辛かったはず。ここに向かうことさえ、命懸けだったのかもしれない。





「…ここから南に少し行って、ディオンとの国境付近に城がある。そこに腕の良い医術師がいるから、一回診てもらって?」


「拙者はいい!とにかく安全な場所へ行け!」


「…私に安全な場所なんてないの。それに、やっぱり今はマサの傷が心配だよ。まだ動けそう?」


「…当然だ。」