(二)この世界ごと愛したい





私の唇から離れたシオン将軍。



どこか柔らかい表情で。





「…次は、もうあんたしか見ない事にする。」




そう言った言葉は私には届きはしないけど。



シオン将軍はそっと私の髪に手を伸ばす。ハナちゃんが乾かしてくれた髪をサラサラと掬って落とし、掬って落とし。





「…あの女と違う。」





自嘲気味に笑って。


そのまま私の髪を撫でるこの人。




遠慮なく私の隣に横になり、うつ伏せのまま眠った私を引き寄せる。






「…忘れろなんて簡単に言うな。」




想わないことも、考えないことも。


簡単なことではないと。






「あんたが居たから耐えられたんだ。」





その腕の中の私を自分の胸に引き寄せる。



女性恐怖症なんて信じられないほど、大事そうに抱え込むその腕。





シオン将軍は食事前までアキト同様お昼寝していたにも関わらず、再び夢の中へ誘われる。




それはきっと幼い二人の、始まりの夢。