「エゼルタにも均衡が崩れれば行くことになるけど。今はまだ…ちょっと時期尚早かな。」
「亡命は?」
「それは絶対無理。」
「…均衡、ね。貴女の考えは分からなくはないけど。貴女が一人で抱えるには重すぎる。」
「うん、知ってる。出来るとこまで…やれるとこまででいいの。」
その後はただ、時の流れに任せるつもり。
「…さっきはすみません。」
「私が悪いんだから謝らないでよー。」
「…眠そうですね。」
「うんー。限界は近いですー。」
もう瞼は開いてはいません。
布団に突っ伏してうつ伏せのまま、私はシオン将軍がいなくなったらすぐ寝てやるつもりです。
「…仮にもさっき襲われたばかりなのに。」
「相手がシオン将軍だからね。」
「どういう意味ですか?」
「…だって、あの時シオン将軍が見てたの…私じゃなかったでしょ。」
別にいいんだけど。
誰と重ねられたって構わない。
だけど私に触れる人の中では珍しく、本気で私を求めてはいなかったのは分かってた。
…悲しさも憎しみも、怒りさえ感じた。
「…恐ろしい人だ。」
「んー?」
「じゃあもう一回試してみる?」
「…やめとくー。」
私だって、あんな覚悟は中々決められない。
断ったけど。
シオン将軍が寝台に上がったのが分かる。
…あーもう。
眠すぎて瞼も上がらないんですけど。
「…すみません。」
「……ん。」
「可愛げないって言ったのは嘘です。」
「…そ…っか。」
私の瞼はもう開くことはなく。
それでも薄れゆく意識の中返事をして。わざわざそんなことを謝ったシオン将軍が面白くて少し笑えた。
そして、さっきとは違う。
冷たくは感じない唇が触れたのを少し感じたけど。
…限界を迎えてそのまま寝ました。

