(二)この世界ごと愛したい





「エゼルタにも均衡が崩れれば行くことになるけど。今はまだ…ちょっと時期尚早かな。」


「亡命は?」


「それは絶対無理。」


「…均衡、ね。貴女の考えは分からなくはないけど。貴女が一人で抱えるには重すぎる。」


「うん、知ってる。出来るとこまで…やれるとこまででいいの。」




その後はただ、時の流れに任せるつもり。






「…さっきはすみません。」


「私が悪いんだから謝らないでよー。」


「…眠そうですね。」


「うんー。限界は近いですー。」




もう瞼は開いてはいません。


布団に突っ伏してうつ伏せのまま、私はシオン将軍がいなくなったらすぐ寝てやるつもりです。





「…仮にもさっき襲われたばかりなのに。」


「相手がシオン将軍だからね。」


「どういう意味ですか?」


「…だって、あの時シオン将軍が見てたの…私じゃなかったでしょ。」




別にいいんだけど。


誰と重ねられたって構わない。



だけど私に触れる人の中では珍しく、本気で私を求めてはいなかったのは分かってた。




…悲しさも憎しみも、怒りさえ感じた。






「…恐ろしい人だ。」


「んー?」


「じゃあもう一回試してみる?」


「…やめとくー。」




私だって、あんな覚悟は中々決められない。



断ったけど。


シオン将軍が寝台に上がったのが分かる。





…あーもう。


眠すぎて瞼も上がらないんですけど。





「…すみません。」


「……ん。」


「可愛げないって言ったのは嘘です。」


「…そ…っか。」




私の瞼はもう開くことはなく。


それでも薄れゆく意識の中返事をして。わざわざそんなことを謝ったシオン将軍が面白くて少し笑えた。




そして、さっきとは違う。


冷たくは感じない唇が触れたのを少し感じたけど。





…限界を迎えてそのまま寝ました。