(二)この世界ごと愛したい




トキは私の頭の上から手を離し、次はふわっと私を抱きしめる。



…お兄さんの目の前ですが。





「ちゃんと女の子だと思ってるよ。」


「へ?…ひゃあっ!?」




ペロリと。


私の耳を舐めた…!?



前にもあった。前にもあったけど、今はお兄さんの前なんですけど!?!?





「可愛いなー。でも安心してね。アキトが将印渡した相手をどうこうしたいなんて思ってないから。」


「なっ…!と…トキのばか!!!」


「俺は可愛いリンを見られるだけで満足だから。」




もう顔の熱は急上昇。


でも、私がトキに対して警戒心を抱かない理由はたぶんそこにある。



トキは本気で私を求めてはいない。






…シオン将軍も、そうだった。






「じゃ、俺は行くね。シオンがまた血迷ったら呼んでねー。」


「…え!?」




血迷う可能性がある人置いて行かないで!!!


そんな願いは届かず、トキは颯爽と部屋を出て行ってしまう。





「……。」


「……。」




最悪だ。


振り出しに戻った。



アキトは外出。救世主トキも退室。もう私を助けてくれる人はいない。





「……。」


「……。」




話があるらしいのに無言のシオン将軍。



もう帰れよと心の中で悪態をつくが、あまりに眠気が襲って来た私はのそのそと寝台へ移動する。


また無理問答が続くだけならこのまま不貞寝してやろう。






「…故意か馬鹿か。」


「…まだ怒ってるじゃん。」