トキは私の頭の上から手を離し、次はふわっと私を抱きしめる。
…お兄さんの目の前ですが。
「ちゃんと女の子だと思ってるよ。」
「へ?…ひゃあっ!?」
ペロリと。
私の耳を舐めた…!?
前にもあった。前にもあったけど、今はお兄さんの前なんですけど!?!?
「可愛いなー。でも安心してね。アキトが将印渡した相手をどうこうしたいなんて思ってないから。」
「なっ…!と…トキのばか!!!」
「俺は可愛いリンを見られるだけで満足だから。」
もう顔の熱は急上昇。
でも、私がトキに対して警戒心を抱かない理由はたぶんそこにある。
トキは本気で私を求めてはいない。
…シオン将軍も、そうだった。
「じゃ、俺は行くね。シオンがまた血迷ったら呼んでねー。」
「…え!?」
血迷う可能性がある人置いて行かないで!!!
そんな願いは届かず、トキは颯爽と部屋を出て行ってしまう。
「……。」
「……。」
最悪だ。
振り出しに戻った。
アキトは外出。救世主トキも退室。もう私を助けてくれる人はいない。
「……。」
「……。」
話があるらしいのに無言のシオン将軍。
もう帰れよと心の中で悪態をつくが、あまりに眠気が襲って来た私はのそのそと寝台へ移動する。
また無理問答が続くだけならこのまま不貞寝してやろう。
「…故意か馬鹿か。」
「…まだ怒ってるじゃん。」

