シオン将軍はそんなトキに目を向けて。


溜め息を吐く。





「…俺は彼女に守られるなんてごめんだ。」


「リンがエゼルタに行けばバレる可能性の方が高い。あの馬鹿女は喜んでバラす。そうなったらリンはきっと怒るよ?」


「呆れるの間違いだろ。」


「だからリンのこと分かってないんだって。シオンにあれだけ憧れてるリンだよ。そんなシオンに下らない嫌がらせしてるって知ったら、また謀反を起こすよ。」




シオン将軍にはまだ測れない。


トキには読み取れる。



私という人間の器量を。





「そんな事で謀反が起こってたまるか。」


「起こしちゃうのがリンなんだって。」


「仮にも彼女だって王族。一度経験してるしその罪の重さは分かってるはずだ。」


「…さっき自分で味わったでしょ。」




トキはやれやれと言わんばかりに苦く笑う。






「自分の身体を差し出すほど責任感が強い子なんだ。自分の価値をリン自身が一番軽んじてる。事なきを得るなら喜んで自分を犠牲にする子だよ。」


「…ユイ姫と真逆だな。」


「比べるのもリンに失礼だよ。」


「…彼女が絡む問題は難問ばかりだ。もう頭痛い。」




珍しく頭を抱える兄の姿を見て、今度はトキが溜め息を吐く。





「それにリンは馬鹿じゃない。さっきのシオンとの一件、リンはどう考えてるだろうね。」


「…狼に噛み付かれたくらいだろ。」


「意外と男慣れしてないんだよ。そんなリンが狼狽えず照れもせずってのが俺には衝撃だった。」


「……。」




確かにアレンデールで私に言い寄る人なんていなかったし。


セザールへ行ってから急激に始まったモテ期。



だとしても、シオン将軍の行為には邪さを感じなかった私はアキトの時のように泡を食って逃げるようなことはしなかった。






「気を付けなよシオン。リンは無意識に人の最奥を読んじゃうから。」





そんな時。


兄弟で会話をしているアキトの部屋のドアが勢いよく開く。