そんなことが昔あったと言うことなのか。
何なのか分からないけども、まだ見下ろすことのできるアキトの顔が曇った。
「…さて、月の姫さん。」
「…だから私違うんだって。」
一瞬曇った顔が嘘みたいに。
アキトは再びニヒルな笑みを浮かべている。
「月には帰らずちゃんと待ってろよ?」
「行き方知らないし。出身月じゃないし。もう姫でもないし。色々違うよー。」
「あと、どこの誰に求婚されても絶対に靡くなよ?」
「う…うん。それは大丈夫…っえ?」
持ち上げていた私を再びその腕の中に、落とすように閉じ込めたアキト。
「…もう抱きたい。」
「はいっ!?」
邪アキトから逃れようとバタバタ暴れる私を、アキトが笑って更に抑える。
「お前が元気だと安心するなあ。」
「邪離してっ!」
「よし!俺から逃げてみろ!!」
そこからアキトとの攻防戦を繰り広げ。
鬼ごっこのように逃げ回り、走り回り。隠れんぼになったり。
もう城中巻き込んで楽しい楽しい時間になった。
子供に戻ったように。
子供の頃出来なかったことを実現させてくれるように。
アキトはいつだって、私に笑顔をくれる人。

