ハルは仮にも王子で、将軍で。忙しかったから仕方ない。
るうや他の家族も、永遠に私に付き添えるわけじゃなかった。
あの頃一人になると自分が消えてなくなりそうな、あの感覚が怖くて不安で堪らなかった。
「アレンデールにも中々帰れねえだろうから。これから先、居場所がなくなったら迷わずここに来い。」
「…でも…私はアキトのこと…。」
「好きじゃなくても嫌いじゃねえなら来い。二度とお前を一人にはしねえ。お前が寂しいなんて思えねえくらい笑わせてやる。」
「それだと、なんかアキトを利用してるみたいで…私やだ。」
そんな風に接するのは嫌だ。
まるで都合良く使うみたいで気が引ける。
「いいじゃねえか。この俺を利用出来んのは世界で唯一お前だけだ。」
私の首元の将印をその指で触って。
ニヒルな顔で言う。
もうこれ以上、反論も言い訳も浮かばない。
「…アキトとはもう、約束はしない。」
「ああ?」
「私も、守れない約束はしない。」
再会した時、大いに喧嘩したからね。
「だから約束する。またここに必ず来るね。」
「…ああ。」
「アキトが来てもいいよって言ってくれてる間だけ、預かることにする。」
「馬鹿。一生持ってろ。」
僭越ながら将印を受け取ることにした。
愛の証としてではなくて、約束を誓う証明として。

