お酒の席で失恋させてしまったはず。
気持ちには応えられないと丁重には言えなかったけど、私はお断りしたはず。
…なのに。
「アキト…?」
「あ?」
「その…大丈夫?」
「…大丈夫じゃなかったらお前の答えは変わんのか?」
変わらない…と思う。
でもるうに教えてもらった。
距離感というか、線引きは大事だと思うので私は腕の中から脱出を試みる。
「何で逃げんだよ。」
「全然逃げれてない…し、お酒飲んだから力もまだ入んなかった。」
「…元々部の悪い戦でな。勝ち筋は見えねえのに、それを諦めるのは俺じゃねえとも思う。」
力なくアキトの腕の中にいる私。
「トキには諦めろって言われた。それが俺とお前のためだって。」
「……。」
「でも違えよなあ?」
「え?」
私を抱き締めていた腕を緩めて、向かい合う形になった。
「お前が好きで俺が憧れる鬼人は、来世まで諦めないことを選んだ男だ。」
「っ…。」
「なら俺は再来世まで諦めねえ。」
そう言って私の首の後ろに手を回す。
首に少し重みを感じたので目を向ける。
そこには、アキトが腰に付けていた椿の将印。
「っあ、アキト!?」
「やる。」
「受け取れない…!!」
家族であるハルとはわけが違う。
もうその意味も知ってしまった以上、貰うわけにはいかない。
「最悪トキがヤバくなった時にって、置いとこうと思ったが。トキのことはお前がどうにかするんだろ?」
「それはそのつもりだけど!使わないままでもアキトが持ってなきゃっ…!」
「いらねえよ。」

