「…弱点というか苦手なものはあります。」


「苦手?そんなのあるの?」


「女性が苦手です。」


「…ほう。」




今誰の横に座ってんのか分かってる?




「トキ、場所変わって。」


「え?あーそれで言うと俺もだよ?」


「えっ!?」




この兄弟は揃って女性が苦手だと言う。


だからハナちゃんはトキに対して一線引いてるのかと、納得する部分もあるけど。





…だとしても。



失礼な話だと思いませんか?





「…うおっ!?」


「私の味方はアキトだけだー。」




席替えです。


私はアキトの横に素早く移動。勢い余ってアキトに突進してしまったけども。




「この兄弟、女嫌いで有名だぞ?」


「…ふーん。」


「拗ねんなって。お前のことは嫌っちゃいねえよ。」




女嫌いの兄弟。


複雑だ。



別に女として見てもらわなくてもいいけど、どうにも複雑だ。





「どうせ女らしくないし。」


「お前にはそれを凌駕する可愛さがあるから大丈夫だ!」


「…そうなるとアキトはただ単に私が可愛いから好きなの?可愛ければオッケーなの?」


「……。」




恋愛って、可愛いで始まるものなのか。


やっぱりどうにも理解出来ない。そんなことに時間を割くなんて世の中どうかしてる。




るうは想いを重ねた年月が違うだけ、お互いに大事に思い過ぎていただけ、難しい問題だったけど。






「…レンも、そうなのかな。」


「…リン?」


「なにー?」


「お前、レンが好きか?」




いつかもしたなー。


ママがそんなこと言ってたなー。




「…もうママにも散々説明したんだけど、私恋愛に興味ないんで。」


「は…はあ?」


「だからアキトもごめんね。」




この場とお酒の力を借りてお断り。




「アキトがフラれた。」


「……。」


「元気出しなって。リンの性格考えれば分かってたでしょ。」


「……。」




魂が抜け落ちたアキトさん。


何やらレンと話をつけるまで返事はしないようにと言われた気もするけど。



先手を打ったのはアキトだ。それにどの道、私にお受け出来る話ではない。





「…ちょっとアキト部屋連れてくね。」


「え…あー、うん。」




トキが生気のないアキトを無理矢理立たせて部屋に連れて行こうと立ち上がる。


少し戸惑ったのは…。




残るこの人と、二人になるのを躊躇ったから。