今の私ならまず頼まない。
自分のために誰かを犠牲にするなんてまずしない。
「…小さい頃の私が頼んじゃったんだよね。」
「何なのその仕掛けって。」
何と説明すれば当たり障りないんだろう。
「アキトっぽく言うと鳥籠的な?」
「鳥籠って、まさか本物か!?」
「快適な鳥籠だよ。出入り以外は自由だし。」
「お前…それ鬼人は止めただろ!?」
ハルは確かに設置の時こそ苦い顔をしていたけども、設置されてしまえば別に平気そうだったし。
寧ろ安心してそうだったし。
「止めてくれたのはママだけだよ。」
「な…何でそんなこと…。」
「私がこの力を持ってることは生まれた時から決まってたのと、可愛さ余って?」
「だからってお前…!!」
それほどの力。
それほどの愛。
今となっては気持ちは痛いほど分かる。
「たまたまシオン将軍がお客さんとして来てて、私の鳥籠に迷い込んだの。」
「だからリンは責任感じちゃったの?」
「あの状況でそんな立場の私が言っていいことじゃなかったからね。トキは同情じゃないって言ってたけど、そりゃ可哀想にも見えるよ。」
「…って言ってるけど、本人はどうなの?」
トキが黙りを続けるシオン将軍に聞く。
聞かなくても分かる。
どれだけ嫌いな人でもあの状況であれば私なら同情して助けてしまうと思う。
「…同情、ね。」
「シオンにはない感情でしょ?」
「それでも思わず同情するほどの凄惨さだったけど。」
そんなにかな!?
檻があるだけでそれ以外は快適だったよ!?
「残念ながら同情するほど情も持ち合わせてなかったんで。」
「ち、違うの?」
「ほらねー。だから言ったじゃん。シオンは同情なんかしないって。リンが可愛かったからでしょ?」
それも違う気がするけど!?
「可愛い?」
「ほら!可愛いなんて感情もない人だよ!トキの勘違いだよ!」
「あれ、おかしいな。兄弟なのに。」

