あの状況でアレンデールの姫である私が頼めば、心の優しい人なら多少でもどうにかしてあげたいと思うんだろう。
幼いからと言って許されることじゃない。王族としての立場を侮った私の落ち度だ。
「…そんな自責で逃げなかったんですか?」
「逃げるか逃げないかは今は重要じゃなくて。私はまだ落ち込んでるし反省してるから本当にちょっと待ってくれるかな?」
「一体いつまで待てばいいわけ?」
「打開策が見つかるまで。」
シオン将軍は溜め息を一つ吐いて。
俯いたままの私の腕を引っ張り、自分が座っているその膝の上に私を乗せる。
…とんでも至近距離、再び。
「泣きそう?」
「…ここで泣いたら私は自分を許せなくなるから絶対泣かない。」
「立派ですね。それで煮るなり焼くなり好きにしていいって言われたんですけど、本当に良いんですか?」
「…本当は絶対嫌。他の策を考えたいけど今は浮かばないからそれで気が晴れるならいいよ。」
この人の十年には遠く及ばない。
こんな傷だらけの私の身体なんて、その価値には全然届かない。
「好きにしていいから…もう、私を想うのはやめて。」
「…また難題な謎解きか。」
どこが謎解きなのと。
聞く間もなく。
「っ…。」
シオン将軍の冷たい唇が私の唇に触れる。
私はシオン将軍の膝の上。
そんな私の腰に腕を回して落ちないように支えてくれているのにも気付いた。
「…っ!」
シオン将軍の唇が離れてそのまま首筋に移動する。
驚きつつも耐えねばならないと私はぎゅっと目を瞑る。
「良い匂い。」
「…っ。」
そんなことないはず。
だけどお構いなしにシオン将軍の冷たい唇が止まらない。ひんやりする感覚と刺激に耐えるだけ。

