(二)この世界ごと愛したい




この頃からハルの強さは異常で。


虎は狼をすぐに捕らえて窓から部屋の中へ引き込むけども。



狼もまた飄々と虎の拘束を脱する。





『…あんたが虎?』


『あ?』


『…こんな悪趣味な部屋やめたら。泣いてたけど。』


『黙れ。』




私とハルの気持ちは繋がってる。


私が辛いのも悲しいのも寂しいのも、誰よりも知ってるのはハルだった。





『…ハル。その人…そのまま無事に帰してあげて。』


『リン?』


『パパには内緒にしよ?』


『…コイツに何言われたか知らねえが、お前を見たことがコイツの罪だ。』





前門の虎、後門の狼。


答えとして狼を選んだ張本人の狼さん。



見捨てられなかったのは、私の気まぐれ。






『別にあんたに助けられるつもりないから。』


『え?』


『…いいよ。気が向いたら出してあげる。』


『っ!!!』




私をここから出してくれると。


ママ以外、そんなことを言ってくれる人がいなかった私はその言葉に驚く。











『だから、もう泣かないで。』





そう言った狼へ虎が襲いかかるが。


ヒラヒラと躱した狼は再び窓から消えていく。



この日この時、狼は私から流れる涙を奪い去ってしまった。





その後ハルに、再びあの狼が裁かれないよう助けて欲しいと懇願して。


どうにか無事に城を出られたと聞けて嬉しかったのを覚えてる。




ハルはこのことを私が思い出さないよう、これでもかって言うほど私を甘やかし暗示をかけた。