この頃からハルの強さは異常で。
虎は狼をすぐに捕らえて窓から部屋の中へ引き込むけども。
狼もまた飄々と虎の拘束を脱する。
『…あんたが虎?』
『あ?』
『…こんな悪趣味な部屋やめたら。泣いてたけど。』
『黙れ。』
私とハルの気持ちは繋がってる。
私が辛いのも悲しいのも寂しいのも、誰よりも知ってるのはハルだった。
『…ハル。その人…そのまま無事に帰してあげて。』
『リン?』
『パパには内緒にしよ?』
『…コイツに何言われたか知らねえが、お前を見たことがコイツの罪だ。』
前門の虎、後門の狼。
答えとして狼を選んだ張本人の狼さん。
見捨てられなかったのは、私の気まぐれ。
『別にあんたに助けられるつもりないから。』
『え?』
『…いいよ。気が向いたら出してあげる。』
『っ!!!』
私をここから出してくれると。
ママ以外、そんなことを言ってくれる人がいなかった私はその言葉に驚く。
『だから、もう泣かないで。』
そう言った狼へ虎が襲いかかるが。
ヒラヒラと躱した狼は再び窓から消えていく。
この日この時、狼は私から流れる涙を奪い去ってしまった。
その後ハルに、再びあの狼が裁かれないよう助けて欲しいと懇願して。
どうにか無事に城を出られたと聞けて嬉しかったのを覚えてる。
ハルはこのことを私が思い出さないよう、これでもかって言うほど私を甘やかし暗示をかけた。

