(二)この世界ごと愛したい




離してほしいと思っているけど。


でももう殺気が微塵もない様子と、抱きしめる腕の優しさで。私の警戒心が緩和するのが分かる。





「怖がらせてすみません。」


「…怖くない。」


「俺は怖かったですけど。」


「何でシオン将軍が怖いの?」




全然怖がる要素ないじゃん。








「…また貴女に嫌われるかと思って?」


「……。」


「ちゃんと三秒待ってくれて助かりました。トキの言う通りだ。」


「…トキ?」




何がトキの言う通りなんだと首を傾げると、シオン将軍は私を抱きしめたまま。


ぽんっと私の頭に手を乗せる。








「いい子。」


「っ…!」




完全に、子供扱いされてる!!!





「もう分かったから離して!不愉快です!」


「すみません。」


「いや、謝るだけじゃなくて離してってば!」


「…困った。」




困ってるのは私ですが。


はよ離してくれ。







「離せそうにない。」


「は…?」




そう言えば。



トキが憶測で何か言っていた。






『リンのことが好きだからだよね。シオンもそうだったらどうする?』





…どうしよう。





「…急に大人しくなりましたね。」


「べ、別に。」


「せっかくの機会なのでもう少し怖がらせてもいいですか?」


「え?」




怖がらせるって何する気なのかと考える暇もなく。




抱きしめたまま。


この兄弟特有の縦抱きで私を持ち上げる。





「っ…。」


「へえ?これ好きなの?」


「はあ!?」




け、敬語どこ行った!?


しかも別に好きじゃないし!?