「…あ、この部屋だ。」
私はトキに言われた部屋のドアを遠慮なく開ける。
中にはちゃんとシオン将軍がいました。
それはもう無防備に爆睡。ここまで気持ち良さそうに寝てるのを起こすのが可哀想だと思えるほど。
「あのー?」
「……。」
「トキに起こしてって頼まれて来たんですけどー?」
「……。」
え、これどうやったら起きるの?
呼び掛けるだけじゃダメらしいので、私はシオン将軍を揺さぶってみる。
「……。」
応答なし。
揺らしても突いても軽く叩いても応答なし。
「無理じゃん。」
こんなのどうすればいいの!?
トキはきっと確信犯だ。
シオン将軍が起きないことを知って敢えて私に行かせたんだ。相変わらず良い性格でございますね。
「起ーきーてー!!!」
「……。」
「起きて起きて起きてー!!!」
「……。」
大声で叫んでも起きない。
信じらんない。私でもここまでされれば流石に起きる。
「…ん?」
月明かりに照らされたシオン将軍の髪が、まさしく狼のように銀色に輝く。
『貴女には狼の方へ進んでほしい。』
そんな言葉が蘇り、私は無意識にシオン将軍の髪に手を伸ばす。
…刹那。
狼が目を覚ます。
「っ!?」
殺気混じりの冷たい瞳が私を射抜く。
「…間違えた。」
「…へ?」
「驚かせてすみません。」
「は?」
一瞬感じた殺気も消え失せている。
けど私は確かに一歩間違えば、確実にシオン将軍に殺されたのではなかろうか。
それほどに冷たかった瞳が頭から離れない。

