膝の上で恐らく眠ったであろうアキト。
良い夢を見られるよう祈りながら、私はここで一つ改めて思い出す。
私に昔、アレンデール城の部屋で出会ったと言っていたシオン将軍。
恐らくあの状態の部屋を見られている。
トキは同情じゃないと言っていたけど、やっぱりそうは思えない。
思わず同情してしまうほどの光景だろうと、この歳になれば嫌でも思えてしまう。
私の部屋にボタン一つで昇降できる檻を作ったのはパパ。
黙認して何も言わなかったハル。
唯一ママだけが反対してくれていたけど、私が大きくなってちゃんと聞き分けることが出来るまで開かれることがなかったあの檻。
「…はぁ。」
思わず溜め息が出るのは。
そんな私の暗黒時代を見てしまったシオン将軍が、今同じ建物の中にいるせい。
そんな人がずっと、私を救い出そうと戦って来たことを知ってしまったせい。
…私は意外と色んな人に想われていたらしい。
そう考えると。
少しだけ心が晴れる気がする。
だから、前向きでいたいと思う。
卑屈になっても過去は変わらないし、くよくよして足が止まる時間が勿体ない。
膝の上で眠るアキトの目の上に置いたままだった手を、再び髪の毛に戻して。
ふさふさの髪をまたよしよしと撫でる。
「…頑張ってね、アキト。」
まだまだ苛烈を極めるこの時代。
どうかその力でこの国を守り抜いてほしい。

