こうしてアキトの部屋に戻って来た。


ここに来たというシオン将軍の姿はもうなくて、やっぱりどうしても二人っきり。




「…そこまで警戒されると流石にキツい。」


「…ごめんなさい。」




最早ガチガチにアキトから距離を取っている私。



意図してるわけじゃないんです。


不可抗力なんです。




しかしトキに言われた以上、逃げてばかりもいられないので。私はアキトに恐る恐るお伺いを立てる。





「ど、どうしましょう?」


「また人を試しやがって。」


「試す?」


「…お前が決めてみろよ。」




えー。


簡単にすぐ終わるのが理想なんだけどー。




「初案のほっぺチューは?」


「却下。」


「ハグは?」


「却下。」




決めてみろって言ったわりには私の意見通りませんね!?



優しい私は更に考えて考えて。


ハルに似ているというアキトに、一つ提案をしてみる。





「じゃあハルの好きなやつにしよう。」


「はあ?」


「膝枕でどうですか?」




絶賛好評中の私のお膝。


なんなら良い夢みれるおまけ付きです。





「…警戒してんのかしてねえのか分かんねえなあ。」


「え?何て?」


「…いや。それでいい。」




ご褒美決定しました。


アキトも疲れてそうだから眠れて一石二鳥ですね。




ということで。


さっさと終わらせようと私は寝台に乗り上げ、ぽんぽんと自分の膝を叩く。





「アキトおいでー。」


「……。(可愛いと思ったら負けだ。)」




遠慮もなしに私の膝にごろんと頭を乗せたアキト。





「今のところ高評価しかないので!安心して堪能してください!」


「煽んな。」


「あ、煽ってない!」


「…けど確かに、悪くねえなあ。」




高評価は継続中で。


眠ってくれさえすればいい夢も見られてより満足してもらえると思います。



だから早く寝ておくれ。




そう思っている私に、アキトが不思議な質問をする。





「…お前、鬼人を兄貴だと思ってるか?」


「ハルを?そりゃあ思ってるけど?どうして?」


「お前にはどうしようもねえ気持ち押し付けられて、将印までもらって、お前の気持ちなんて無関係に想われて。それでも嬉しそうに笑ってたから。」




うーん。


確かに側から見れば痛い兄妹。



普通ならそんな感情を抱くことさえ許されない相手。それを知って、どうして私が喜べるのかと。そう言うことなんだろう。





「ハルは馬鹿なの。」


「鬼人は馬鹿じゃねえよ。」


「アキトの中のハルがどんな人なのか知らないけど。私は馬鹿だと思ってる。」


「そうかあ?」




馬鹿みたいに私を想って。


馬鹿みたいに私を慈しんで。


馬鹿みたいに私を大事にしてくれる。