(二)この世界ごと愛したい




続いて他のお兄さん達も私に近寄る。



おいおい。


どこで邪スイッチ入ったの!?





「何してっ…!」


「悪いな。隊長の相手の後で疲れてんだろうが、俺達もよろしく頼むわ。」


「ちょっ…待って!私アキトに謝らなきゃっ…!」


「大丈夫だって。長い付き合いだが、隊長が本気で怒ってるとこなんて見たことねえし。」





お兄さん達の目が、本気だ。


まるで獣の様な目。




『邪なんて言葉覚えたんなら、俺が何から守ろうとしてるか分かるよなあ?』




…それはもう、ちゃんと理解しました。














「それは俺に、本気で怒られてえってことでいいんだな?」





部屋のドアの方から聞こえた声は。


本当にどこか怒りの感情を含んだアキトの声。







「離せ。」


「た、隊長?この嬢ちゃんもう事済んだ後じゃ…?」


「さっさと離せ。」




お兄さん達が恐る恐る私を解放する。







「リン。」


「…はい。」




私も恐る恐るアキトを見る。



とりあえず身体を起こして座ってみた私に、アキトが近付いてくる。




…もう、色々ごめんなさい!!!








「うっ…ん?」




アキトが私の口の中に、何か入れた。



それは硬くて甘い。







「…金平糖?」


「ったく、人が機嫌取りに買い物行ってる間にお前は何してんだよ。」




ぽんっと私の頭に置かれた手は、優しかった。





思い出した。


また、同じだ。



ハルと喧嘩した時、ハルも私の好きな甘いものを用意して私の機嫌を取ろうとする。



…例えそれがどれだけ私が悪い状況でも。




でも、今回怒らせたのはハルじゃない。私はこの優しさに甘え過ぎちゃいけない。