続いて他のお兄さん達も私に近寄る。
おいおい。
どこで邪スイッチ入ったの!?
「何してっ…!」
「悪いな。隊長の相手の後で疲れてんだろうが、俺達もよろしく頼むわ。」
「ちょっ…待って!私アキトに謝らなきゃっ…!」
「大丈夫だって。長い付き合いだが、隊長が本気で怒ってるとこなんて見たことねえし。」
お兄さん達の目が、本気だ。
まるで獣の様な目。
『邪なんて言葉覚えたんなら、俺が何から守ろうとしてるか分かるよなあ?』
…それはもう、ちゃんと理解しました。
「それは俺に、本気で怒られてえってことでいいんだな?」
部屋のドアの方から聞こえた声は。
本当にどこか怒りの感情を含んだアキトの声。
「離せ。」
「た、隊長?この嬢ちゃんもう事済んだ後じゃ…?」
「さっさと離せ。」
お兄さん達が恐る恐る私を解放する。
「リン。」
「…はい。」
私も恐る恐るアキトを見る。
とりあえず身体を起こして座ってみた私に、アキトが近付いてくる。
…もう、色々ごめんなさい!!!
「うっ…ん?」
アキトが私の口の中に、何か入れた。
それは硬くて甘い。
「…金平糖?」
「ったく、人が機嫌取りに買い物行ってる間にお前は何してんだよ。」
ぽんっと私の頭に置かれた手は、優しかった。
思い出した。
また、同じだ。
ハルと喧嘩した時、ハルも私の好きな甘いものを用意して私の機嫌を取ろうとする。
…例えそれがどれだけ私が悪い状況でも。
でも、今回怒らせたのはハルじゃない。私はこの優しさに甘え過ぎちゃいけない。

