話が出来そうな敵将なら、少し話をしようかなと密かに思った。
私の事情で振り回しすぎてるから、変な恨みを買ってアレンデールやセザールに飛び火しては元も子もない。
「トキが囲地に誘い込むのに成功したから、こっちは少数でも充分戦える。だから今は俺とサクが交互で前線に出てる。」
「流石トキだね。」
「ああ。隊を二隊に割ってるから長期戦になるだろうが負けることはねえよ。」
「…でも、押し返せる程の決定打もないってことだよね。」
侵攻された国境を。
トキは取り戻す気はないのか、それとも他に何か策があるのか。
若しくは…。
「今、ソルと戦ってる戦場には全部で二万しか置いてない。」
二万で今の今まで五万の軍を押さえていたということか。
アキトの軍は元々五万の規模。
「…まさか、他にも戦場ある?」
「ああ。王宮の馬鹿共が三万持って行った。」
…想像以上の非常事態だ。
トキが手を焼いているのにも合点が行く。
「ちょっと地図見せて。」
「お前は気にすんな。どっちの戦場も負けはしねえよ。」
「早く持って来て!!!」
私の勢いに押されて、アキトは地図を取りに部屋を出た。
ソルとの戦場にアキトとサクの将軍二人を敢えて配置しているということは、もう一方の戦場は恐らく別の将軍が統率してる可能性が高い。
単に兵力だけを貸しているんだろう。
一体いつからこんな状態で、アキトたちは戦っていたんだ。

